目覚まし時計の絶望

東京都中野区野方疲労回復治療院
 
時計を見たら絶望的な気分になる。
だから、見ない。
 
自分の中の決め事。
ルール。
規律、掟、不文律…
 
言い方は何でも良いが、そういうもんだ。
 
 
窓の外が白み始める。
 
鳥の声。
新聞配達の音。
騒がしい酔っ払い達はもういない。
 
 
時計は見ない。
見たら、
絶望的な気分になるのは間違いないからだ。
 
その勘だけは天才的に良い。
昔から。
 
 
 
資料を閉じて、ベッドに潜り込む。
 
「ギシギシ…」と鳴る音に
自分の疲れを重ねていく。
 
それを奏でるのが、
“軋むベッドなのか?俺の骨なのか?”は
よく分からない。
 
 
手を伸ばして、布団の中をまさぐる。
 
隣に誰もいないことを確かめるに、
きっと自分の内なる叫び声なんだろう。
 
 
 
何時間寝られるのかは不明。
 
 
確かなのは、
“行くべきところ/やるべきこと”があり、
その為には、
「起きなくちゃいけない」
ってことだけ。
 
それ以外に理由はない。
 
 
目覚まし時計をセットする。
 
暗闇で。
手探りで。
 
 
慣れたもんだ。
これまで何度も何千回も繰り返してきたこと。
 
 
眠る前、
いつもの言葉が頭をよぎる。
 
 
 
“明日は今日よりきっと良い日”
 
いつかの雑誌の広告コピー。
もしくは、
俺の願望が生み出した妄想コピーかもしれない。
 
 
でも、
そう信じて生きてきたし、
毎晩呟いては眠りに落ちる。
 
 
 
先の見えない暗闇の中にあっても
この肉体は常に俺と共に闘い、
時に寄り添い、支え、慰め合いながら、
前へ前へと進み続けていく。